男性泌尿器科とは
男性泌尿器科では、腎臓・尿管・膀胱・尿道をはじめ、男性特有の臓器である前立腺、精巣、陰茎、陰嚢 等でみられる症状や病気を中心に診療いたします。
デリケートな部分で異常が起きるケースが多いので、受診をためらう方も少なくありません。しかし受診が遅くなればなるほど、それだけ症状が悪化し、手遅れとなる可能性もあります。以下で挙げた症状のいずれかに該当する方は、お早めにご受診ください。
当診療科で患者さまがよく訴えられる主な泌尿器症状
- 尿が出にくい、出ない(排尿困難)
- 尿に血が混じる
- おしっこが近い、回数が多い
- 夜間、何度も尿意で起きる
- 尿が残っている感じがする(残尿感)
- 尿が漏れる
- 尿に血が混じる
- 足がむくむ
- 腰や背中が痛む
- 腎臓の辺りが痛む
- 尿道から膿が出た
- (健診などで)血尿(尿潜血)や蛋白尿を指摘された
- 尿路(腎臓、尿管、膀胱)に結石がある
- など
男性がよく訴える主な症状
- 睾丸や陰嚢が腫れた
- 陰茎、陰嚢が痛む、かゆい
- 亀頭、包皮に水疱やいぼができた
- PSA(前立腺特異抗原)値が高いと言われた
- 男性更年期障害のような気がする
- 勃起力が低下した
- など
男性泌尿器科の主な疾患
尿潜血・血尿
尿中に血液が混じっている状態を尿潜血といいます。肉眼で明らかに血液が混在していることがわかる肉眼的血尿と、見た目は普通の尿と変わらないものの、顕微鏡による検査で赤血球が5個以上確認される顕微鏡的血尿(尿潜血陽性)があります。
要因としては、生理的要因もあれば、何らかの病気が原因となっていることもあります。生理的要因であれば一過性であることが多く、激しい運動の後、月経の影響、発熱や過労などが挙げられます。何らかの病気が原因の場合、腎・泌尿器疾患であれば、炎症(腎炎、膀胱炎、尿道炎)や尿路結石(腎臓、尿管、膀胱)、腫瘍(腎臓、尿管、膀胱)、腎臓の外傷などによって、尿中に血液が混じるようになります。
尿路結石症
尿は腎臓の腎盂で溜められた後、尿管、膀胱、尿道を経て、体外へと排出されます。この腎盂から尿道までの経路を尿路といい、これらの器官それぞれで結石が発生している状態を総称して、尿路結石症といいます。結石が発生している部位によって、腎結石、尿管結石、膀胱結石、尿道結石と表現されます。日本人の場合、主に30~50代の男性が発症するケースが多く、患者全体の95%を上部尿路結石(腎結石、尿管結石)が占めるとされています。
結石は、尿成分の一部が析出あるいは結晶化したもので、シュウ酸カルシウム、リン酸カルシウム、尿酸、リン酸マグネシウムアンモニウムなどが含まれています。発症の原因は、尿酸やカルシウムなどの代謝異常、尿路感染、乱れた食生活、水分の摂取不足、内分泌疾患などがきっかけとなって起こるといわれています。
発生部位によって症状が異なるのも特徴です。例えば、腎結石は自覚症状が出にくく、あったとしても血尿や背中から腰にかけての鈍痛程度といわれています。一方尿管結石は、血尿のほか、腰背部やわき腹に激痛がみられ、吐き気などが出ることもあります。そのほか、膀胱結石では、排尿時痛、血尿、頻尿、排尿困難など、尿道結石では、血尿、排尿時の瞬間的な痛み、尿線途絶などが現れます。
検査・治療について
診断をつけるための検査としては、尿検査や画像検査(レントゲン、超音波検査、CT 等)などを行い、血尿や結石の有無などを確認することで総合的に判断していきます。
治療に関しては、痛みの症状が強ければ、NSAIDsや抗コリン薬などの薬物療法を行います。結石が10mm未満であった場合は、1日に2~3ℓ程度の水を飲むことで、自然と結石が尿道から排出されやすい環境づくりをするほか、薬物療法で結石の体外排出を促すという方法をとることもあります。
発見された結石が10mm以上の場合は、自然排出ではなく手術療法となります。腎結石や尿管結石であれば、外部から結石に向けて衝撃波を結発生させ、石を破砕させる体外衝撃波結石破砕術(ESWL)や、尿道から内視鏡を入れて尿管の結石を砕く経尿道的結石破砕術(TUL)を選択します。また、膀胱結石や尿道結石では経尿道的結石破砕術(TUL)を用います。
膀胱炎
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腎盂腎炎
主に尿を溜めて膀胱へと送る器官である腎盂が細菌に感染し、発熱や全身倦怠感などの様々な症状が出る状態を腎盂腎炎といいます。なお、基礎疾患のない方が発症した場合は急性単純性腎盂腎炎、基礎疾患を持つ方が発症した場合は複雑性腎盂腎炎と分類されます。
急性単純性腎盂腎炎は、比較的若い女性に発症しやすく、主に大腸菌による尿路の逆行性感染となります。感染することで、発熱、悪寒、腰背部痛、吐き気などの症状がみられ、膀胱炎に続いて起きることが多く、血尿や頻尿などもみられます。診断には、尿検査、血液検査や超音波検査、CT検査などが有用です。
複雑性腎盂腎炎は、尿路に何らかの基礎疾患(前立腺肥大症、尿道カテーテル留置、尿路結石、尿路奇形 等)がある患者さまが発症します。腎盂腎炎の発症の有無自体は尿検査や血液検査で確認できますが、尿路の基礎疾患の有無を調べるために腹部エコー、CTなどの検査も行っていきます。
治療に関して、急性単純性腎盂腎炎では、抗菌薬(セフェム系、ニューキロノン系 など)を使用するほか、利尿を促進させるために水分を十分に摂取していただきます。複雑性腎盂腎炎の場合は、基礎疾患の治療が中心ですが、腎盂腎炎による症状が出ている場合は抗菌薬を用います。
前立腺肥大症
男性特有の臓器である前立腺は、クルミ程度の大きさで、膀胱の真下、尿道を取り囲む位置に存在しています。ここでは精子に栄養を与えるほか、精子を保護する働きをする前立腺液が分泌されます。この前立腺が肥大化する病気を前立腺肥大症といいます。この肥大化によって尿道が圧迫されるため、残尿感、頻尿(夜間頻尿)、尿意切迫感、尿の勢いの低下などの症状がみられるようになります。
発症の原因は、加齢や男性ホルモンの影響とされており、60歳以上の男性に多くみられるという特徴があります。
検査・治療について
診断をつけるための検査としては、まず腹部超音波検査で前立腺の大きさや残尿測定をします。前立腺がんの可能性の有無を調べるために、腫瘍マーカー検査(PSA)や尿検査、直腸診を行います。このほか症状をスコア化したIPSS(国際前立腺症状スコア)を用いて、疾患の重症度を判定することもあります。
治療方法は症状の程度によって異なりますが、主に薬物療法、手術療法などが挙げられます。薬物療法は、症状が軽度の場合に用いられることが多いです。使用する薬は、α1遮断薬(尿道を拡張させる働き)や抗男性ホルモン薬などです。また症状が進行し、薬物療法では改善が難しい場合には、手術療法を行います。尿道から内視鏡を挿入し、内側から電気メスで前立腺を焼灼して切除するTUR-P(経尿道的前立腺切除術)などの内視鏡手術が行われます。ただし手術療法が難しい場合は、尿道にステントを留置して、尿を出しやすくする施術が選択されることもあります。
亀頭包皮炎
亀頭包皮炎は、亀頭や包皮が炎症を起こす状態を指します。お子さまによく見受けられる疾患ですが、成人男性でも「陰茎がかゆい」「包皮が腫れている」などの症状がみられる場合、亀頭包皮炎である可能性が高いです。
主な原因としては、細菌や真菌(カンジダ 等)の感染、衛生状態の不良、刺激物への接触などが挙げられます。大腸菌や黄色ブドウ球菌といった私たちが元々持っている常在菌が、不衛生な状態を原因として繁殖し、炎症を起こすこともあります。
治療では、包皮をめくり、膿を出して消毒した後に、抗生物質の軟膏を塗ります。また、再発予防のため、陰部を清潔に保つこと、過度な洗浄を避けることが推奨されます。なお、真性包茎により、亀頭包皮炎を何度も繰り返す場合は、包茎手術を行うこともあります。
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男性更年期障害
更年期障害と聞くと女性特有の症状と思われがちですが、最近になり男性にも更年期症状があることが明らかになりました。男性更年期障害はLOH(late-onset hypogonadism)症候群と呼ばれることもあります。
女性の場合、多くの方が閉経を迎える時期とされる50歳前後の更年期(45~55歳)に起きるとされていますが、男性の場合も大半は40~50代、つまり女性の更年期障害と同じような年代で見受けられます。
原因は、主に加齢によるテストステロン(男性ホルモン)の減少とされていますが、40~50代の男性は、責任の重い職務が増えるなど心理的負担が重なりやすい世代でもあります。したがって、これらの要素が相まって、男性更年期障害を引き起こすのではないかともいわれています。
主な症状は、何となくやる気が出ない、意味もなくイライラしてしまう、眠れない、常時疲れている気がする、めまい、性欲減退・性交時に勃起しない、抑うつといったものが挙げられます。
検査・治療について
患者さまの症状などから男性更年期障害が疑われる場合、AMS(Aging males symptom)スコアなどの問診票を行って重症度を判定します。また、血液検査で男性ホルモン(テストステロン)を測定することで診断をつけていきます。
その結果、テストステロンの数値が明らかに減少しており、男性更年期障害と診断された場合は、テストステロンを体外から注入していくホルモン(テストステロン)補充療法を行います。ただし、前立腺がんの患者さま(あるいはPSAの数値が高い方)、前立腺肥大症が中等度以上の患者さま、重度な肝機能障害や腎機能障害のある患者さまなどにつきましては、上記ホルモンを投与することはできません。
また、男性更年期障害と診断されても、ホルモン値が正常である場合には、日頃の生活習慣を見直す、漢方薬を使用するなどして、症状の改善を図ります。