泌尿器がんとは
主に腎臓、尿管、膀胱、尿道、前立腺などでがんがみられることを意味します。
前立腺がん
前立腺がんとは
前立腺に発生したがんのことをいいます。特に欧米の男性に発症しやすいとされていましたが、最近は日本でも食の欧米化や高齢化などが進んだことにより、日本の男性の患者数も増える傾向にあります。発症の原因としては、遺伝的要因、男性ホルモン、加齢、肉中心の食生活などが挙げられていますが、はっきりと特定されているわけではありません。
発症初期に自覚症状が現れることはありませんが、がんが進行し、尿道が圧迫されるようになれば、頻尿(夜間頻尿)、排尿困難、残尿、排尿時痛、血尿、血精液症などの症状が現れるようになります。
検査・治療について
診断をつけるための検査としては、血液検査で腫瘍マーカーであるPSAの数値を調べます。PSA高値でがんの可能性が高い場合は、前立腺組織の一部を針で採取し、詳細を顕微鏡で調べる針生検を行い、がんの有無を判断します。
治療方法は、進行の程度によって異なります。早期がんで転移もなく、患者さまの年齢も若いという場合には根治的な治療として、手術療法や放射線治療が選択されます。一方、高齢の患者さまなど、上記の治療が困難と判断された患者さまに関しては、ホルモン療法(アンドロゲンを抑制する)を行い、それでも効果が乏しいという場合には、化学療法(抗がん剤)が検討されます。
腎がん
腎がんとは
腎臓がんとも呼ばれています。このうち、尿を生成する働きのある腎実質の細胞ががん化し、悪性腫瘍になったものを腎細胞がん、腎盂にある細胞ががん化したものを腎盂がんと区別します。主に50~60代の男性に好発しやすいのが特徴で、高齢になるにつれてそのリスクは高まる傾向があります。
腎がんで初期症状がみられることは稀で、発症後すぐに発見される場合は、定期的な健康診断におけるエコー検査といったケースが大半です。病状がある程度まで進行すると、発熱、体重の減少、倦怠感、貧血といった症状のほか、肉眼で確認できる血尿、腰背部の痛み、腹部の腫瘤(しこり)などが現れるようになります。
発症要因としては、加齢をはじめ、肥満や喫煙、高血圧、遺伝子が原因とされる病気(フォン・ヒッペル・リンドウ病 等)、透析患者さまであることなどが挙げられています。
検査・治療について
診断をつける検査としては、画像検査(造影剤を用いたCT、腹部超音波検査、MRI)によって、腎臓内の腫瘤の有無などを確認するほか、体の状態を調べる血液検査を行います。
がんの発生が確認された場合、治療が必要となりますが、遠隔転移が確認できなければ、手術による腫瘍の摘出を行います。その方法としては、2つある腎臓のうち悪性腫瘍のある側を全て摘出する根治的腎摘除術のほか、腫瘍が小さい場合(4cm以下)は、腎臓の一部を部分的に切除する腎部分切除術が挙げられます。また、手術による腫瘍の摘出が難しい場合には、薬物療法として、分子標的薬、免疫療法による免疫チェックポイント阻害薬、サイトカイン療法などが行われます。
膀胱がん
膀胱がんとは
膀胱の粘膜に発生する悪性腫瘍のことを膀胱がんといいます。高齢(60~70代)の男性に発症することが多いという特徴があります。発症原因については、完全に特定されてはいませんが、喫煙や化学物質(アニリン、ベンジン、ナフチルアミン 等)に慢性的に触れていること、シクロフォスファミドと呼ばれる薬物の使用などがリスク要因になると考えられています。
発症初期には、痛みや違和感などの自覚症状はありませんが、肉眼で確認できる血尿(無症候性肉眼的血尿)、もしくは肉眼ではわからない顕微鏡的血尿のいずれかがみられるようになります。このほか、膀胱が刺激を受けると頻尿や排尿時痛が現れます。また、病状の進行によって、腰背部痛、体重減少などが起きることもあります。
検査・治療について
膀胱がんが疑われる場合、血液検査、膀胱鏡検査(尿道から内視鏡を挿入し、膀胱内部を調べる)、尿細胞診、腹部超音波検査などを行い、診断をつけていきます。
治療としては手術療法を行うことが多く、まずTURBT(経尿道的膀胱腫瘍切除術)と呼ばれる、診断と治療の両方が可能な手術が行われます。診断では、がんの侵襲の程度を確認するために、一部組織(膀胱粘膜)を採取し、顕微鏡で詳細を調べます。その結果、筋層非浸潤性がんと診断された場合は、TURBTでの完全切除による手術が行われます。ただしそれだけでは再発する可能性が高いので、予防対策として抗がん剤やBCGを膀胱内に注入することもあります。また、筋層浸潤性がんと診断された場合は、膀胱全摘除術を行った後、尿路変向術を行います。
このほか、他の臓器にがんが転移しているのが判明した場合は、化学療法や放射線療法を検討します。
腎盂・尿管がん
腎盂・尿管がんとは
腎盂・尿管に発生するがんのことで、その大半は尿路上皮がんといわれています。高齢男性に発症しやすく、喫煙や化学物質(ベンジジン 等)に慢性的に触れることなどが発症のリスク要因として挙げられています。
主な症状として、発症初期には排尿時に痛みなどがない血尿がみられます。さらにがんが進行し、水腎症などを発症するようになると、腰背部や側腹部に痛みなどが現れるようになります。血尿が確認された場合は、速やかに泌尿器科を受診してください。
検査・治療について
腎盂・尿管がんが疑われる場合、尿細胞診によって悪性細胞の有無を、腹部超音波検査や尿路造影CT検査によって腎盂・尿管に腫瘤の有無を調べることで診断をつけていきます。
治療方法は、転移がみられない場合は手術療法となります。具体的には、腎尿管全摘除術と膀胱部分切除術が行われます。また、転移が判明した場合は、全身化学療法(抗がん剤治療:GC療法等)や、症状を緩和させる目的で放射線療法を行うこともあります。
精巣がん
精巣がんとは
精巣がんは、男性の精巣に発生する悪性腫瘍です。比較的20~40歳の若年層に多く見られ、早期に発見されれば治療の効果が高いことが特徴です。精巣がんは、セミノーマと非セミノーマという2つの主要なタイプに分類されます。セミノーマは比較的進行が遅く、非セミノーマは進行が速いことが多いです。
最も一般的な症状として、精巣に無痛性の腫れやしこりがみられます。病状が進行し、がんがリンパ節や他の臓器に転移すると、腹部や腰に痛みがみられるようになります。
検査・治療について
精巣がんの診断には、精巣の腫れやしこりを確認するための触診、視診のほか、超音波検査や血液検査を用いて、精巣内の異常やがんの進行度を調べます。その進行度合いによって、腹部や胸部などのリンパ節や他の臓器へ転移していないか確認するために、CT検査を行うこともあります。
精巣がんの治療方法は、そのタイプや進行度によって異なります。初期段階の治療としては、精巣を摘出する精巣摘除術を行います。がんが進行していたり、再発の可能性が高かったりする場合は、複数の薬剤を組み合わせる化学療法が選択されます。また、タイプによる違いとしては、比較的進行速度の遅いセミノーマの場合、がん細胞を破壊するために放射線を照射します。早期発見によりリスクが少ないと判断された際には、精巣摘除術後に定期的な検査を行いながら経過を観察することもあります。
精巣がんは、早期発見・治療が重要です。定期的な健診を受けるのはもちろん、健診や日常生活で異常を感じた際には、早急に診察を受けるようにしてください。